一般財団法人日本交通安全教育普及協会

高齢運転者の出合頭事故

事故の概要

夕方近く、高速道路の側道を走っていたAさん(75歳)の運転する乗用車は、2車線道路と交わる交差点に近付いた。Aさんの方の道路に一時停止の標識と道路標示があったのだが、Aさんは一時停止や徐行をせず交差点に進入した。ちょうどその時、2車線道路側からBさんの乗用車が交差点に進入して来た。2台の車は交差点の中央付近で衝突し、衝突の衝撃で、Aさんの乗用車に乗っていたCさんが死亡した。

事故の原因

Aさんが、一時停止をしなかったことが事故の原因である。この事故の特異なところは、Aさんに事故の記憶が全くないことであった。Aさん自身も怪我をし、病院に搬送されたのであるが、自宅に帰るまでの記憶が全くないという。しかも、運転中に大きな衝撃を感じたと話していることなどから推測すると、Aさんは一時停止のある交差点に進入したことに気がついていなかったと考えられる。

この事故から学ぶこと

最近、車を運転していて事故に遭う高齢者が増えているが、高齢者の事故で比較的多い事故形態は、この事例のような出合頭事故である。高齢運転者が四輪車運転中に起こした(第1当事者となった)死亡事故のうち、出合頭事故の割合は19%である(25~64歳の運転者では13%)。高齢運転者の事故が多い理由として高齢化に伴う心身機能の低下が考えられている。Aさんが、交差点に近付いたことに気がつかなかったことや、事故前後の記憶がないことが心身機能の低下と関係があるかは定かでないが、高齢者は、自分の心身機能の低下を十分自覚して運転する必要があると言える。

No.377 1997年 9月号

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