速度超過による2つの危険性
事故の概要
夜の11時頃、A君は友人3人を乗せた乗用車を運転して、外出先から家に帰る途中であった。制限速度が時速30kmの道路を時速約120kmで走行していたところ、ハンドル操作を誤って、車は横滑りし始めた。A君は車のコントロールを取り戻すことができず、乗用車は路外に逸脱、空き地を通り越して別の道路を横切り、建物に衝突して停止した。この事故によりA君を含む乗員全員が車外放出され、A君と後席に乗っていた友人が死亡した。A君を含む全員がシートベルトを着用していなかった。
事故の原因
A君がハンドル操作を誤ったことが事故の直接の原因であるが、大幅な速度超過が、このような大きな事故になった最大の要因だと考えられる。
この事故から学ぶこと
この事例からは、速度超過による2つの危険性を学ぶことができる。第1の危険性は、速度を出し過ぎるとハンドル操作を誤る可能性が高くなったり、回避操作を行う余地が少なくなるなど、事故の生じる危険性が増大することである。 この事故においても速度が低ければ、車は横滑りしなかったか、または横滑りした後に車を立て直すことができたのではないかと考えられる。 第2の危険性は、衝突時の衝撃が大きくなることである。最近の車は性能が向上し、時速40kmの時も、時速100kmの時も運転のしやすさや快適さの感覚に大きな違いはないが、衝突した時の衝撃の大きさにはかなりの違いがある。速度が低ければ、乗員の被害は軽くてすんだかもしれない。また、他の車や歩行者に衝突した場合は、相手に与える衝撃も大きくなる。 死亡事故の発生原因の第1位は速度超過である。速度超過による危険性をよく認識し、スピードの出し過ぎには十分注意したい。
No.388 1998年 8月号
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