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交通事故事例 事故は何故起こったか

《検証》

 

道路に寝ていた歩行者を轢過した事故

事故の概要
 深夜、家路を急ぐAさん(19歳)は、片側2車線の国道を走行していた。左前方のバス停付近に停止している四輪車(C車)を認めそちらの方を見ていたが、その車両に近付いたところ別の物体が道路の中央付近にあるのに気がついた。その物体は酒に酔って道路で寝ていたBさん(29歳)であった。Aさんは急ブレーキとハンドルでかわそうとしたが間に合わずBさんを轢過してしまった。その日の天候は曇りで、事故現場付近の規制速度は50km/hであり、事故直前のAさんの走行速度は60km/hと推定される。


事故の原因

 このような事故の場合、四輪車の運転者の方に前方不注視の非があり、運転者の過失の方が道路に寝ていた歩行者の過失より大きいと判断される。交通事故による賠償金額を算定する時の基準によると、道路に寝ていた(横臥していた)歩行者の過失の割合は、四輪車からの発見が容易である場合は20%、容易でない場合は30%となっている。


この事故から学ぶこと

 刑事責任や民事責任(一般的には賠償金額の大きさで決められる)は道路交通法や過去の裁判の結果に基づき決定されるのであるが、ここで用いられる基準は、一般の人の常識とは必ずしも一致しない場合がある。例えば、横断禁止場所を横断中の歩行者をはねた場合は、車の過失が大きいと判断されるし、急ブレーキをかけた車や駐車禁止の場所に駐車している車に追突した場合は、追突した車の過失が大きいと判断される。脇見運転や漫然運転には要注意である。

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高齢運転者の出合頭事故

事故の概要
 夕方近く、高速道路の側道を走っていたAさん(75歳)の運転する乗用車は、2車線道路と交わる交差点に近付いた。Aさんの方の道路に一時停止の標識と道路標示があったのだが、Aさんは一時停止や徐行をせず交差点に進入した。ちょうどその時、2車線道路側からBさんの乗用車が交差点に進入して来た。2台の車は交差点の中央付近で衝突し、衝突の衝撃で、Aさんの乗用車に乗っていたCさんが死亡した。


事故の原因

 Aさんが、一時停止をしなかったことが事故の原因である。この事故の特異なところは、Aさんに事故の記憶が全くないことであった。Aさん自身も怪我をし、病院に搬送されたのであるが、自宅に帰るまでの記憶が全くないという。しかも、運転中に大きな衝撃を感じたと話していることなどから推測すると、Aさんは一時停止のある交差点に進入したことに気がついていなかったと考えられる。


この事故から学ぶこと

 最近、車を運転していて事故に遭う高齢者が増えているが、高齢者の事故で比較的多い事故形態は、この事例のような出合頭事故である。高齢運転者が四輪車運転中に起こした(第1当事者となった)死亡事故のうち、出合頭事故の割合は19%である(25〜64歳の運転者では13%)。高齢運転者の事故が多い理由として高齢化に伴う心身機能の低下が考えられている。Aさんが、交差点に近付いたことに気がつかなかったことや、事故前後の記憶がないことが心身機能の低下と関係があるかは定かでないが、高齢者は、自分の心身機能の低下を十分自覚して運転する必要があると言える。

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若者による夜間の無謀運転事故

事故の概要
 金曜日の夜11時頃、予備校生のA君は友人2人と遊びに出かけ、普通乗用車を運転して国道を走っていた。時速約100kmで緩やかな右カーブに差し掛かったところ、ハンドル操作を誤り、乗用車は歩道を乗り越えて街路樹に衝突した。衝突の衝撃でA君と助手席に乗っていた友人はいずれも脳挫傷で死亡し、後部座席に乗っていた友人も重傷を負った。


事故の原因

 A君が速度を出し過ぎていたこととハンドル操作を誤ったことが事故の原因である。若者による交通事故の中には、速度の出し過ぎ等の無謀運転による事故が多いことが特徴である。また、発生する時間帯は夜間(特に深夜)が多い。学校や仕事が終わったあとに、友達や仲間と遊びに出かけ、その途中で事故に遭うことも多い。


この事故から学ぶこと

 若者による事故が多い原因として、運転技術が未熟であることがまず考えられる。しかし、車を動かす技術が特に下手な運転者が事故を起こすわけではないようだ。運転免許を取得して1年以内に死亡事故を起こした運転者の教習所での記録を調べた結果によると、これらの運転者は平均的な運転者より技能教習の時限数が短いという。A君の場合も教習所の成績は大変良く、規定の教習時限数(34時限)で卒業しており、仮免と卒検も1回で合格していた。 安全運転態度や危険予測能力など車を動かす技術以外の問題がむしろ重要であることを指摘する専門家も多い。技術的な側面とメンタルな側面の両方の素養を養うことが重要であると考えられる。

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夜間の視覚環境に対する認識不足は危険(夜間の駐車車両追突事故)

事故の概要
 午後9時頃、高校生のA君は50ccのスクーターに乗って友人宅に向かっていた。工業地域を通り抜ける見通しのよい2車線道路を走行している時、1台の自動二輪車とすれ違った。暗かったのでよく分からなかったが、友人の自動二輪車のようだった。振り向いて遠ざかる二輪車をよく見たらやはり友人であった。A君が再び前を向いたところ、目前にB車が停車しているのに気づいた。気づくのが遅過ぎたため、A君は何もできずにB車に追突した。


事故の原因

 脇見が原因の事故であるのは明らかである。速度をやや出し過ぎていた(40〜50km/h)ことも回避操作を間に合わなくした要因であったと考えられる。現場付近は工業地帯のため夜間はやや暗く、平均照度(明るさ)は4.7ルクスであった。障害物を発見するのに最低限度の明るさはあったと考えられるが、道路照明の設備基準による望ましい明るさ(7〜15ルクス)よりは暗かった。工場の敷地内にある照明は、駐車車両があった場所までは、届いていなかったようである。道路上の障害物を発見するのにやや悪い条件であり、特別の注意が必要であったにもかかわらず、速度超過の上に不用意に脇見をしたA君に油断があったと言える。


この事故から学ぶこと

 夜間は、駐車車両や歩行者などの障害物が発見しにくい視覚環境になっている。このことを忘れて脇見をしたり速度を出し過ぎたりすることは大変危険である。夜間に運転する時は、夜間特有の視覚環境による危険性をよく理解した上で、危険を予測しながら運転することが重要である。

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駐車車両の直前直後の横断は危険

事故の概要
 金曜日の夕暮れ、小学校5年生のA君は、自転車に乗り自宅から塾に向かっていた。塾に行くには、交通量の多い道路を横断しなければならなかった。その日は月末でもあったためか、向こう側の車線は渋滞のせいで車が数珠つなぎに停車していた。近くの信号が赤であるためか、こちらの車線もしばらく車は走ってこないように思えた。今なら横断できると判断してA君は横断を始めたが、A君には接近してくる乗用車が駐車車両に視界を遮られて見えなかったらしい。乗用車を運転していたBさんは、駐車車両の陰から道路を横断しようとするA君の自転車を認めたが、発見するのが遅かったため、A君の自転車と衝突した。


事故の原因

 現場は見通しのよい直線道路であるが、事故発生当時は駐車車両が多かった上に対向車線は渋滞していて、これらの車両の間から自転車や歩行者の横断が予測できる状況であったと言える。このような状況であったにもかかわらず、前方に十分な注意を向けていなかったBさんに責任があると考えられる。また、危険な場所で横断を試みたA君の行動にも事故に巻き込まれる原因があったと考えられる。


この事故から学ぶこと

 この事故事例から、道路を横断する時には、安全に横断できる場所を探し、左右の安全を確かめてから横断するという当たり前の習慣が重要なことが示唆される。特に、駐車車両の直前直後の横断は危険である。また、駐車車両が多い道路や、対向車線が渋滞している道路を走行する時は、車両の間から自転車や歩行者が道路を横断する危険を予測しながら走行することが大切である。

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